ゲームと小説と遊びの子狐屋じゃくまるブログ

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目が覚めたら洞窟の中でした。仕方がないので生活環境を整えつつ帰還を目指します。 第4話 転移装置

 さくらたちを伴い廃墟までやってきた私は、早速初日に探索した建物内を再探索することにした。

 ある程度持てる物は持って行ったし、灰なども得ることはできた。

 しかし、まだ埋もれた個所もあるので何か残っているかもしれない。

 

 今日改めてこの建物を見てみたが、ぼろぼろな廃墟の割に雨に濡れた形跡はなかった。

 どうやら何かに守られているようなのだが、力の痕跡が弱すぎて追いにくい。

 とりあえず言えることは、まだ何か秘密がありそうだということだけだ。

 

「ところどころ崩れているのに床面は意外ときれいですね。変な感じです。それに微弱ながら何かを感じます。知っている感じと知らない感じの二つ」

「はい、これ知ってます。でも遠い昔のような……」

 さくらと雛は何かを感じ取ったようだ。

 私も集中して確認してみることにする。

 

「弱いね。でもこれは……。いや、なんでここにいるんだろう? あの子には任せたものがあるはずだけど」

 この波長を私は知っている。

 最初期にこの世界を任せた私の直属の眷属である【雛菊】のものだ。

 この世界ではどう伝わっているかはわからないが、間違いない。

 

「マスター、何かわかりましたか?」

 さくらが私の顔を覗き込んでくる。

 

「あぁ、わかったよ。これは【雛菊】の波長だ。なぜかはわからないけど、近くにいるようだ。おそらく弱っている」

「えっ? 雛菊ちゃんの?」

「本当に雛菊ちゃんだとしたら~……。雛菊ちゃん、大丈夫でしょうか~……」

 そもそも雛菊に何かあったとしたら私にもわかるはずだ。

 しかし、今までそんなことはなかった。

 どういうことだろうか。

 

「マスター。マスターと雛菊ちゃんのリンクは正常ですか? 私、今調べてみたんですが、雛菊ちゃんとのリンクが切れていました。こんなことはほとんど起こりえません」

 さくらが不安そうに私を見上げてそう言った。

 

「リンクは、辛うじて繋がっているかな? いや、これはほとんど切れているね。これでは気が付けない。世界規模で何か起ったかな?」

 私と眷属たちは細い紐のようなものでお互いがつながっていると言ってもいい。

 件の雛菊とのリンクはそれが極端に細くなり切れかけた糸のようになっていた。

 

「とりあえず、繋がりを辿って雛菊を探そう」

「はい!」

「は~い」

 間違っていなければこの近くにいるはずだ。

 

「雛、この石を回収して」

「は~い。どんどん倉庫に入れちゃいま~す」

 私の指示で雛は周囲の瓦礫を倉庫に収納していく。

 私でもできないことはないが、力の大部分は家に置いてきているので今は使えない。

 なので、雛たちに頼りきりになってしまうことになる。

 

 元々雛たちは私の護衛兼補助として生まれた存在で、合計で七人存在している。

 管理者として出した子はまた別になるが、常に一緒に活動する三人のほか、後方支援で四人がいる形だ。

 

 形態は2つで、神霊形態と人間型護衛形態がある。

 心霊形態の時はおおよそ60センチほどの大きさで常に浮いているが、人間型形態の時は身長が145センチ前後となる。

 大体10代前半から半ばくらいの見た目がほとんどだ。

 というのも、彼女たちはまだ子供で幼いというのが理由なのだが……。

 それでも戦力は一級以上なので、甘く見たらひどい目に遭うことは確実だ。

 

「雛、ストップ。そこの脇に見知った文様がある」

 瓦礫もだいぶ片付いた室内、ふと見ると何かの文様が描かれた一枚のタイルがあった。

 

「これは雛菊ちゃんのですね。ということは、この近くに……?」

 さくらが文様の周辺を調べる。

 

「なるほど、見えないように隠されていますね。この文様自体がリンク先に繋がっているようです」

 くまなく調べていたさくらが一つの結論を導き出した。

 あとは起動できるかだ。

 

「とりあえず動くかはわからないけど、起動させてみよう」

 私は早速雛菊の文様に手を当てる。

 すると、文様が一瞬輝くと同時に私たちはどこかへと転送されてしまった。

 

「起動は成功ですね。場所は……島の深部、ルピナス級次元航行艦のメディカルルームのようです」

 転送が完了したと同時にさくらが周囲の情報を集めたようだ。

 たしかに、足元の感触は石から金属のそれへと変わっている。

 

「主電源は落ちてるようだね。メディカルルーム内は補助電灯の明かりが灯っているようだ」

 主電源が動いている場合は全体を照らすように明るくなるが、補助電源しか動いていない場合は薄暗い明りの補助電灯しか点灯しない。

 おそらく、メディカルルームの機能は限定的なものになっているだろう。

 

「とりあえず進みながら稼働しているポッドを探そう」

「わかりました。補助電源はこの階層を対象に稼働しているようです。この付近なのは間違いないと思います」

「雛菊ちゃんを早く探さないと……」

 さくらは周囲のチェックを行い、雛は妹分の心配をしている。

 みんなのためにも、早く探して状況を確認しなければいけないね。

 

 探索といいつつも、通路を進みながらいくつかの扉をチェックするだけなのだが、数が多いせいですぐに特定できない。

 特にここでは雛菊の波長が辿れないので、すぐに特定することができない。

 

「ここは違うか。次はあっちだね。まったく、なんでこんなに数が多いんだか……」

 メディカルルームというと小さなものをイメージするかもしれない。

 だがこの船は元々移民船に随行していたこともあって、やたらと病床数が多いのだ。

 下手をすると何日もかかる可能性がある。

 まぁそれでも、階層が違うわけではないので多少数は減るのだが……。

 

「防衛装置も今は起動していませんね。邪魔されなくて幸いです」

「もしでてきたらどっかんする~」

 さくらの言うことはもっともだが、雛よ、どっかんはやめてほしい。

 修理することになったら非常に面倒なんだ。

 

「いまいち場所の特定が難しかったですが、微弱ながら反応が確認できました。もう二ブロック先のようです」

「にしてもこっちで確認できないのはなんでなんだろうか。妨害している何かが出ている?」

「マスターがマスター権限を再取得できれば問題なかったんですけどね。主電源が落ちた状態ですとナビゲーションは起動しません。しかも今は侵入者防止用のジャマーが誤作動しているようですね」

「まじか……」

 ここまで面倒なことになっているのはどうやら私のせいだったようだ。

 ごめんなさい、反省します。

 

 心の中で反省しつつしばらく歩いていると不意にさくらが立ち止まった。

 

「このあたりのはずですが、う~ん。また消えました。四つの扉のどれかですね」

 薄暗い通路には私たちを中心に左右二つずつの合計四つの扉があった。

 このどれかというなら楽なのだが、もし全部外れだったらどうしようもない。

 

 一つ目の扉に近づく。

 キーロックに手をかざすも反応なし。

 

 二つ目の扉に近づく。

 キーロックに手をかざすも反応なし。

 

 三つ目の扉に近づく。

 キーロックに手をかざすとわずかに反応あり。

 でも扉は開かず。

 

 念のために四つ目の扉にも近づく。

 こちらもキーロックに手をかざすとわずかに反応があったが扉は開かなかった。

 

「二択!?」

 ここに来てまさかの二択である。

 しかもこれ、どちらもはずれの可能性がある二択なわけで……。

 

ぐぬぬ……」

「馬鹿やってないで早く確認してください。開かなかったら力づくで開ければいいんです」

 どっちかなと扉の前で悩んでいたらさくらに叱られた。

 うん、どっちも開ければいいんだよね。

 

「どっせーい!」

 仕方がないので目の前の扉、四つ目の扉から開けることにした。

 ものすごく固いがなんとか動かすことはできる。

 

「うらー!」

 叫んでようやく、人一人分の隙間を開けることに成功。

 めっちゃ疲れました。

 

「お疲れ様です、マスター。さぁ、確認しましょう」

「はぁ……はぁ……。はい」

 さくらの導きに従って室内に入る。

 その間雛は私の背中にぴったりと張り付いていた。

 

「雛、手伝ってくれてもよかったんじゃ?」

 私がそういうと、雛は可愛らしく小首をかしげてこう言った。

 

「主様のかっこいいところが見たくて」

「あ、うん」

 可愛らしくそう言われてはそれ以上は何も言うことができなかった。

 

「マスター、どうやら当たりのようです。誰かいます」

 先行したさくらが何かを見つけたようだ。

 

 さくらを追って中に入ると、そこには閉じたメディカルポッドの前で体を震わせながら顔を伏せている何者かがいた。

 

「うぅ……。うぅ……。お姉様……。お姉様……」

 謎の人影はどうやら泣き続けているようだ。

 ところでお姉様とは誰なんだろう。

 

「もし、そこの人。そのポッドで寝ているのは誰ですか?」

 さくらがそう声をかけると、伏せる人影はゆらりと立ち上がり、こちらを振り向いた。

 

「誰……。ここをどこだと思っているのですか。誰がここに入って良いと言いました!? 下等生物の分際で!!」

 声からして女性、それも比較的若いようだ。

 よくわからないが、段々と激高してきたのか語気が強くなっていく。

 

「マスター、後ろへ」

「主様守る」

 どんどんヒートアップする女性に何かを感じたさくらと雛が私の前に出て、そう言った。

 どうやら面倒なことになったようだ。