ゲームと小説と遊びの子狐屋じゃくまるブログ

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目が覚めたら洞窟の中でした。仕方がないので生活環境を整えつつ帰還を目指します。 第8話 それぞれの役割

 従者たちと女神テューズ、シアを連れて地上へと戻ってきた。

 一部権限しか取得できない状態ではあの場所に残っても意味はない。

 というわけで、さっそく今後のことを考える。

 

「マスター、この島を覆う結界ですが、しばらくはこのままがいいと思います」

 廃屋に戻って来て早々さくらがそのような提案をしてくる。

 まぁ分からなくはないかなと思う。

 

「はい。さくら姉様の言う通りがいいかと思います。この結界を張ったのは眠る前のわたくしですが、結界内は今の第五紀人類にはまだ早い技術になります」

 結局この島に眠る技術が発掘された結果、同じ歴史を繰り返してきたのだからその提案は当然だろう。

 私としても、無意味に人類を滅亡させたいわけではない。

 しかし、使い方を教えなければ結局勝手に使ってしまい、気が付いたら滅亡していることもありえる。

 どうするべきだろうか。

 

「主様は~、しばらくは世俗にあまり関わらずに~、スローライフをしたいと言ってましたよね~」

 力が戻るのはまだ先なので当面は島でのんびり過ごしたいとは思っている。

 そのためには雛に家を建ててもらうほうがいいんだけどなぁ……。

 

「詠くん、寝る場所ほしい」

 私の心を読んだのか、それともだらけたいのかはわからないが、鈴が私に要望を出してきた。

 これは乗るしかないな。

 

「そうだね。まずは住む場所を作ろう。さすがに洞窟住まいというわけにもいかないし。シアはどうする?」

 女神テューズは帰ると思うので、シアに話を振ってみる。

 

「家。情報だけは知っている。作るなら物資は提供する。わたしはどこでもいい」

 元々が空間の狭間に棲んでいる生命体なので、家のことは情報くらいでしか知らないようだ。

 まぁ『アレ』が生命体なのか情報思念体なのかはわからないのだが……。

 

「わかりました~。あたしもゆっくり寝たいので~。そういえば狐さんたちはどちらに~?」

「おや? そういえばどこだろう」

 雛の言葉で気が付いた。

 ついてきていた狐たちは一体どこに行ったんだろう。

 

 そんなことを思いながら廃屋の外へ行くと、狐たちはみんな木陰で気持ちよさそうに丸くなっていた。

 どうやら待ちくたびれたようだ。

 

「おや、あんなところに。まぁしばらくはそっとしておくとして、予定を考えないとか」

 建物の建設予定地をどうするのか、そもそも私たちがこのままここにいてもいいのかなどなど、考えることは山のようにあった。

 

「雛菊。私たちはこの島でどういう風に生活するといいかな?」

 ここは管理者に聞くとしよう。

 

「はい。この廃屋は昔わたくしが作ったものですが、この島自体は一応現世に属しています。ですので、普通の建物を建てる分には構わないのですが、ご主人様関係で何かされる場合はもう一つ空間を作って、そこで行ってほしいと思います」

 私の質問に雛菊はそう答えた。

 なるほど。ということは、まずどこかを繋げて居住空間を作る必要がある。

 さて、良さそうなものは何だろうな……。

 

「ところで雛菊ちゃん? この先の洞窟前に壊れかけた社があったんですけど、あれはなんですか? 誰か祀ってたりしました?」

 さくらの言葉で思い出したけど、結局あの社はなんなんだろう?

 

「社……。あっ、あれですね。あれは、ご主人様がいらっしゃったときに居住される空間と現世を繋げていただこうと思って用意したんです。今の今まで忘れてました!」

「なるほど。ではちょうどいいですね。洞窟前から周囲にそれぞれの社や建物を建てて、洞窟から先を聖域としましょう。基点はあの社です」

「は~い。じゃあさっそく準備しますね~」

「みんな頼んだ。シアは雛について必要なものを出してあげてくれ」

「わかった」

 雛菊の言葉を聞いて、さくらはさっそくみんなに指示を出し始めた。

 眠そうにしながらも雛は嬉しそうにシアと一緒に洞窟のほうへと飛んでいく。

 さて、残された私たちは何をしようか。

 

「雛菊は女神テューズに指示をお願いしていいかな? 帰るのもいいし留まるのもいい。どの道、神力が低下した状態の女神様じゃできることは限られるからね」

「わかりました」

 雛菊はさっそく廃屋内にまだ留まっている女神の元へ向かった。

 彼女はこれからどうするんだろうね。

 

「じゃあ私たちも行こうか。さくらも鈴も私の肩に乗ってていいからね」

「わかりました」

「ん」

 私の言葉に気を良くしたのか、さくらも鈴も嬉しそうに尻尾を振っている。

 

「さぁ、狐たち。帰るよ」

 狐たちに声をかけると、耳をぴくっと動かして顔を向けてから立ち上がった。

 そして軽くあくびをしてそのまま私の足に頭をこすりつけ始める。

 くすぐったいけど彼らのしたいようにさせてあげる。

 

「じゃあみんな出発だ」

 両肩にさくらと鈴を乗せ、足元には狐たちがついてくる。

 気が付けばちょっとした大所帯になっていた。

 

 私の従者であり眷属であるさくら、雛、鈴、雛菊は妖狐の神霊形態の時はみんな同じ身長だ。

 60cmほどの大きさで常に浮遊している。

 髪型と髪の色はそれぞれ違うので、見た目で見分けることも可能だ。

 

 そんな彼女たちは人間と同じ形態になることもできる。

 その際はおおむね145cm前後の身長になる。

 なぜか神霊形態の時は同じ身長なのに、人間形態の時は身長いばらつきがあるから不思議だ。

 ちなみに、髪色は黒色になることが多い。

 

「鈴ちゃん、ほかの従者はどうしてました?」

 さくらが不意に鈴に問いかける。

 

「ん。一時期混乱してたけど大丈夫。詠くんに呼ばれたら殴るっていってたから」

「あらあら」

 あらあらじゃありません。

 何さらっと怖いこといってるんですか。

 

「しかし、シアさんのことは驚きましたね。意思疎通ができたこともそうですが、こちらに興味を持って接触してくるなんて」

 本当にそのとおりである。

 一体何がシアに興味を持たせたのだろうか。

 

フリージアの件はあると思う。でもそれは一時的なこと。今までの調査でわかってるのは『アレ』は宇宙を意図的に生み出せないということ」

 シアを含む『アレ』には正式名称がない。

 何もない空間に棲息し、凍り付いた宇宙やエネルギーを使い果たした宇宙を食べては、その残滓を吐き出すというサイクルを繰り返していた。

 吐き出された残滓は長い年月をかけて纏まることもあれば、お互いが遠くに離れてしまうこともあるようだ。

 運良く纏まった残滓は、新たな宇宙誕生の可能性を秘めているが、結局運次第だ。

 

 そんな残滓を見つけては強制的に纏め、新しい宇宙を創る。

 それが今まで私たちが、『アレ』を追いながらやってきたことでもあった。

 だからだろうか? 自分たちにできないことをできる私たちに興味を持ったのは。

 まぁ何にしても、それはシアたちにしかわからないことか。

 

「そういえば、スローライフといえば料理や商売のことも考えないといけませんよね。マスター、そのあたりはどうするんですか?」

 不意にさくらがそんなことを聞いてきた。

 そういえば、料理や商売については全く考えていなかったなぁ……。

 

「みんな料理はできることはできる。でも食べさせる料理となると話は別」

「そうですね。マスター、今度あの子呼び出してください」

「ん? あぁ、わかった。料理といえばあの子だからな」

 実は、私の従者の中には料理や商売に特化した子がいる。

 二人一気には呼び出せないと思うので、片方ずつ呼び出すことになるけど仕方ないか。

 

「主様~。場所決めたのでお手伝いさん呼び出してくださ~い」

 さくらたちと話しながら歩いていると雛が近寄ってきた。

 どうやらお手伝いを必要としているようだ。

 一体どんな建物を建てるのやら。