ゲームと小説と遊びの子狐屋じゃくまるブログ

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目が覚めたら洞窟の中でした。仕方がないので生活環境を整えつつ帰還を目指します。 第12話 ピザと世界システムの管理者

 ピザはおいしい。

 でも食べ過ぎると太るわけで。

 

「はふぅ。もっちもち。おいしいですね」

 さくらがとろけたような顔をしながらピザを頬張っている。

 もちもちほっぺはぷっくり膨れて一生懸命口をもごもと動かしている。

 

「主様お手製ピザ久しぶりです~。材料あまりないので酪農も考えないといけませんね~」

 あまり材料がないのか、雛はそんなことを言いながらさくら同様もちもちぽっぺを膨らませていた。

 

「詠くんのピザおいしい」

 鈴は相変わらず乏しい表情で可もなく不可もなくといった感じでピザを食べる。

 まぁ感想はおいしいの一言なわけだが。

 

「ず~っと食べていませんでした。懐かしいです」

 雛菊に食べさせたのは何回だっただろうか? ずいぶん放っておいてしまったこともあってかなり長いこと食べさせていなかったようだ。

 ものすごくごめんなさい。

 

「これがピザ? というものですか? 不思議なものですね」

 女神テューズは物珍しいのか、くるくる回しながら小さな口で少しずつ食べていた。

 そういえば、ここの神様は実体があるんだね。

 

「不思議な食べ物。情報を記録」

 シアはというとピザ片手に分析を始めていた。

 ピザに何か重要な秘密でもあるのだろうか?

 

「生地は多めに作ってあるからどんどん食べてね~。今新しいの焼いてるから」

 今回のピザは地球でおなじみマルゲリータだ。

 シンプルながらも素晴らしいピザだと私は思っている。

 チーズの種類は悩むけど、余計な味がついていないシンプルなものほどトマトソースに合う気がする。

 

「はうふぅ。さすがにおなかが苦しくなってきました。それにしても、フェアリーノームちゃんたちは本当によく食べますね」

 さくらが小さなおなかを擦りつつフェアリーノームたちを見ながらそう口にした。

 現在、フェアリーノームたちは踊り始める者もいたりしてプチ宴会といった感じになっていた。

 相変わらずにぎやかな子たちだ。

 

「マスター。今後ですが、ここに入れる者を制限して招待しませんか? 主には異変の対処要員としてですが」

 一息つき始めたころ、さくらがそんな提案をしてきた。

 ふむ、制限か。

 

「この世界には妖種はいないんだっけ?」

 この場所に入れる者を選ぶなら妖種は外せないだろう。

 といっても、私自身もこの身体になってそこまで月日は経っていないのだが。

 

「はい。この世界にはいません。ゆえに結界内に妖都を作るのはいかがでしょう? 妖種候補も探さなければいけませんけど」

 妖都かぁ。いいかもね。

 というわけで、タスクに妖都建設を入れておこう。

 あとあ妖種候補はどうしよう? 眷属化が必要なんだよなぁ。

 

「そういえば、獣人っていたりするのかな?」

「獣人ですか? お姉様を模した存在は作りました。バリエーションはたくさんありますね」

 私の疑問に答えたのは女神テューズだった。

 そうか、一応この世界の主神の立場にいるんだっけか。

 なんだかんだでポンコツなので忘れていたけど……。

 

「獣人がいるなら第一候補。次は眷属になってもいいという動物かな。そんな動物いるのかな?」

 動物がいきなり人型になると色々大変なので、あまりお勧めはしたくないのが本音だ。

 でもどうしてもという希望があるなら考慮はするつもりだけど。

 

 地球においては長い年月を経て妖になった存在が妖種の起源なので、長い時を待てば出てくる可能性はある。

 ただ、この世界には魔力はあっても妖力がないため、変化は難しいかもしれない。

 

「う~ん。お? どうしたのかな?」

 悩んでいると、そばにいた親狐が背中にぐりぐりと頭を押し付けてきた。

 遊んでほしいのかと思って撫で繰り回していると、子狐たちのほうを何度も見ている。

 ふーむ?

 

「はい。はい。そうなんですか? う~ん。いいとは思いませんが、この子たちの意見はどうなんですか? あ、はい。なるほどです。わかりました」

 親狐が吠えると何やらさくらが反応し始めた。

 どうやら会話をしているようだ。

 ちなみに、私は動物の言葉は何となくしかわからないのだが、さくらたち妖狐の神霊は言葉がわかるらしい。

 なんかずるい気がする。

 

「この森には狐の数が少ないそうです。娘たちの今後が心配なのでどうにかしてほしいと言っています。ちなみに全員女の子らしく、お手伝いくらいはできるのではないかと言っていますね。娘さんたちはお手伝いしたいそうですけど、どうします?」

 どうやらさくらは子狐たちの狐生相談を受けていたようだ。

 それにしても全員女の子かぁ。

 男の子のいる群れは近くにいなんだろうか。

 

「う~ん……。狐からの妖種化だと狐にも変化できるらしいね。本狐たちがいいなら問題ないのでは? 近くにちょうどいい男の子のいる群れがあったらそっちに行ってもいいしね」

 というわけで、動物妖種枠で採用しておこうか。

 親狐はどうしようか。

 

「親御さんたちはどうする?」

 そう尋ねると、親狐が何やら吠えている。

「今はまだいいそうです。しばらくはマスターに撫でられて過ごしたいとか。まぁ親ですし妖種化したら色々大変ですからね」

 しばらくは愛玩狐枠に収まっているつもりのようだ。

 まぁ可愛いからいいんだけど。

 

「それじゃ、私の血を舐めさせておいてね」

 そう言ってから力を少し込めて、木の皿に血の雫を垂らした。

 動物も舐めやすいように、中心が少し盛り上がったタイプの木の皿だ。

 ちなみに雛が作ってくれたものでもある。

 

「は~い、子狐さんたち~、一滴ずつ舐めてくださいね」

 さくらが子狐たちを誘導して一滴ずつ舐めさせていく。

「はい、よくできました。変化までは少し苦しいかもしれないので、眠りましょうね」

 さくらの言葉の後、子狐たちはそろって眠りについていった。

 まるで催眠術である。

 

「さて、雛ちゃん? 私たちくらいの大きさになると思うので同じサイズの服を用意してください。人化の時も同じくらいのはずですので」

「は~い。姉様」

 さすが同性というだけあって、てきぱきと指示を出していく。

 たしかにこのままだったら全裸になってしまうか。

 雛はさっそく服の準備を始めるために家の中へと戻っていった。

 服も作れるんだからすごい。

 

「さてと、私も準備しますか」

「はい。お手伝いします」

 腰を上げて社へと向かうとさくらも一緒についてくる。

 う~ん、最初に作る新しい領域は小さめでいいか。

 この島くらいのサイズでっと。

 

「それじゃ始めるよ」

 私はそう告げると心の中でクリエイティブコードをつぶやいた。

(アクセス アーカイブ デュオ クリエイト ニューワールド)

 

 つぶやいた瞬間、祠の前に光が発生した。

 狭間の空間に領域が確保された瞬間だ。

 それと同時に、周囲から光が集まり人の形に形成されていく。

 アーカイブの管理者が私を認識したらしい。

 

 集まった光はやがて、小さな一人の少女の姿となった。

 アーカイブの管理者イリスである。

 

「マスター。お久しぶりです。そして仮の復活おめでとうございます」

 小さな銀髪の少女イリスはそう告げた。

「あぁ、イリス。久しぶり。まだ本体はできていないんだけど、しばらくは会うことができるよ。姉たちは元気?」

「はい。アイリス姉様もセフィシス姉様も元気です。他の姉様方は相変わらずですけど……」

 このイリスはアーカイブの管理者として任務に従事している執行者兼管理者の一人だ。

 ちなみに、ここでいうアーカイブとは膨大な世界の情報を一括管理するアーカイブ、別の言い方をするとアカシックレコードなどと言われたりもするもののことだ。

 

「そうだ。この世界の問題を解決するために執行者を呼ぼうと思うんだけど、誰が適任かな?」

 私の質問を聞いたイリスは「う~ん」とうなって考え込んでしまった。

 それからしばらくして「セフィシス姉様にお任せされてはいかがでしょう」と提案してくれた。

「わかった。その案で行こう。じゃあ、新領域の管理任せてもいいかい?」

「はい。お任せください。システムに組み込むので今しばらくお時間いただきますけど」

「それは大丈夫。よろしくね」

「はい!」

 イリスは実に嬉しそうに返事を返してくれた。

 

 こうして新しい領域はシステムの管理下に置かれることとなった。