こんにちは、じゃくまるです。
今回のはちょっと追放物の試作品です。
展開は考え中ですが、最初だけ作ったのでちょっと載せておこうと思います。
――もう嫌だ。逃げたい……。
現在ボクは、異世界からやってきたロリコン勇者に抱き着かれ、頬ずりされている。
非常に気持ち悪い……。
なんでこうなったし……。
地元を離れて新しい別の国へ修行に来たはいいものの、従者も連れていなかったため右も左もわからず迷っていた。
そんなボクを最初に拾ってくれたのが、今まさに抱き着いている勇者だった。
あぁ。あの時の鼻息の粗さに気づいていれば……。
後悔先に立たず。
勇者。
異世界からやってくる、もしくは召喚される対魔王に特化した人間のことを指す。
魔王。
魔王とは、魔族の王のことを指すのではなく、魔物の王のことを指している。
この世界には浄化しきれないほどの怨念が溜まっており、それが魔力と結合して強力な魔物の王が生まれる。
彼らはこの世界の人間の攻撃を受け付けることはなく、勇者の攻撃のみが通じる。
そのため、勇者という存在がどうしても必要になるのだ。
ボクは興味ないが、異世界から召喚された勇者はイケメンだと評判だった。
女性に優しく気が利き、所作も優雅ということで彼女になりたいという人が続出したという話もある。
まぁ紆余曲折あって、この国、カルバニア王国の第一王女であるキメリス様が一方的に婚約宣言をすることで、一応の終息は見たのだが……。
なので、この気持ち悪い勇者は一応婚約者持ちのはずである。
それなのに、こんなことをされていたらボクが泥棒したと疑われて処刑されてしまうので、是非ともやめてほしいところだ。
「はぁはぁ。イズナたんいい匂いだ。小さいし可愛いし、キュートな狐耳も尻尾もついてるし、何もかもが最高だああああああ」
「ひぃっ!?」
顔を寄せられ匂いを嗅がれ、その上耳元でうるさいとか、何一ついいところがない。
早く解放してください……。
ボクが天に祈っていると、勇者は突然わけのわからないことを言い出した。
「うん。そろそろ禁断の狐吸いをするべきかな?」
「は? 狐吸い? なんですかそれ」
この勇者は本当にわけのわからないことを言い出す。
狐吸いってなんですか。
「ふふ。こうやってイズナたんの上着の裾をめくって、おなかを出すでしょ」
そう言って勇者はボクの着ているブラウスの裾に手をかける。
「は? な、なにを」
瞬間、ボクのブラウスの裾が鳩尾までめくりあげられた。
「!!!?」
「こうして、おなかに顔をうずめて、吸うのさ!!」
勇者は満面の笑みでボクのおなかを凝視している。
これ以上はやばい……。
「ボ、ボクは8歳ですよ!? 成人するまで200年はかかるんです! あきらめてください!!」
「長期間少女でいる点も素晴らしい! さすがはこの世界に一人しかいない異世界の妖狐!! やっぱりイズナたんは俺の最高の嫁だああああああ」
ロリコンはさらに興奮してしまったようだ。
こうなったら……!!
「い、いい加減に、しろおおおおおおお!!!」
「んほおおおおおおお」
ボクはありったけの力を使い、勇者を弾き飛ばすことに成功した。
哀れなロリコンは今崩れた壁に埋まっている。
「はぁはぁ。やってしまった……。これはそろそろ逃げるべきですかね……」
ボクは覚悟を決めた。
今こそ逃げるべきだと。
しかし……。
「何の音ですか!?」
「あ、やばっ」
大声でそう言いながら近づいてくる人物に、ボクは心当たりがあった。
「あ、あ、あ、貴女は!? こ、この、泥棒猫!! またわたくしの勇者様に手を出したのね!? もう許しておくものですか!!」
怒り頂点なこの国の第一王女キメリス様。
この状態だともう話も聞いてくれないだろう。
でも、今は可能性にかけるしかない。
「ち、違うんです。ボクは痴漢を撃退しただけで……」
「嘘おっしゃい! 勇者様はわたくしにもほかの子たちにも手を出さない紳士的なお方なのですよ!? そんな方が痴漢を働くはずがありません!」
それはそうですよ、だってその人ロリコンですもの。
そう言いたいけど、言ったところで見た目と実績が邪魔をして真実にたどり着かない。
「もういいです。出ていきなさい!! 今すぐ、この国から!!」
「わ、わかりました」
こうしてボクはこの国から追放された。
キメリス様の愛する勇者に手を出した泥棒猫という不名誉な称号と共に。