妖都伏見はボクのお婆様が作った都市なのだという。
街の年齢からするとお婆様はかなりのお年なんだろうか。
お母さんの年齢もまだ謎だけど、聞いたら怒られそうなので聞けない。
多分最低でも二千歳近いのではないだろうか?
「遥ちゃんが失礼なことを考えているのはわかるけど、私たちの年齢を気にしても意味ないわよ? 気にするのは人間やドワーフやエルフ、あとはほかの種族たちくらいかしら」
「そ、そんなことは考えてないです……」
ボクの考えていることを言い当てられてちょっとびっくりした。
お母さんするどいなぁ……。
「そういう意味だとミレちゃんやミリアムちゃんも同じなのよ? あの見た目で数千年は生きていると思うと驚きでしょう?」
「た、たしかに……」
言われてミレを見る。
ミレは銀髪を背中まで伸ばしたロングヘアの小さな女の子だ。
色白で目は青く、顔も整っているので控えめに言っても美少女であることは間違いない。
身長は種族特製なのかわからないけど、だいたい120cmくらいだ。
まぁ目測なので気にしてもしかなたいけど……。
名前が決まっているほかの子の話もすると、ミカは白髪のツインテ女の子で、目の色は赤。
ミナは水色髪のショートボブヘアの女の子で、目の色は翡翠色をしている。
それぞれに特色があって面白いし可愛いと思う。
もちろんほかの子もピンク色だったりする子もいるので、みんなが同じというわけではない。
さらに言えば性格もみんな違うのだ。
「そういえばミカちゃんって研究が好きな子なのかしら」
お母さんの話はミカに移った。
そういえばちゃんと紹介したことなかったっけ。
「ミカはうちにいる十人のフェアリーノームのうち、二番目に名前を付けた子なんです。ポーションや薬の研究、病気の研究とかいろいろな研究が好きなようで、うちでは医師として医療班扱いになってますね」
ボクの紹介を聞いてミカは平たい胸を張った。
ちょっとかわいい。
「そうなの。ミカちゃんはすごいのね。偉いわ」
お母さんに頭を撫でられてミカはくすぐったそうに身をよじる。
「ミナは社交的な性格ですね。笑顔で相手を和ませたり撫でたりはぐしたりして落ち着かせるのが好きなようです。手当とかもできるので、うちでは看護師として医療班扱いになってます」
ボクの紹介を聞いたミナは長いスカートでカーテシーをする。
普段無邪気で人懐っこいのにこういう時葉お嬢様風なんだよね。
表情もどことなく妖艶な感じに見えるし……。
「ミナちゃんすごいわね。遥ちゃんも社交的だったらよかったんだけど、昔から引っ込み思案だったのよね。特に女の子と話すと緊張しすぎてどもっちゃうから、ミナちゃんたちが治してあげてね」
「お、お母さん!?」
ミナはクスクス声に出さずに可愛らしく笑うと、ボクにそっと抱き着いてきた。
そしてそのまま背中をポンポンと優しく叩かれる。
もしかしてミナって、お母さん属性あったりする?
「あらあら。仲が良いのね」
お母さんが微笑ましそうにみているので、なんだか少し恥ずかしくなってきた……。
それからボクはほかのフェアリーノームたちにもハグをされたり撫でられたりして夕食までの時間をすごした。
夕食。
宴会場のような場所に膳が用意されており、そこに座っての夕食となる。
お母さんがここにいるけど、お父さんの夕食はいいのだろうか?
「お母さん、お父さんの夕食は良いんですか?」
「お父さんは後で来るからその時で大丈夫よ。雄一郎さんがいたらフェアリーノームちゃんたちが逃げちゃうでしょ?」
言われてミレたちを見る。
今はおとなしく鯛をもぐもぐと食べている。
箸の使い方がボクより上手なこと以外は特におかしな点はない。
むしろ食べてる姿が妙にかわいく見える。
「たしかに、今は可愛らしく食べてるのに邪魔するのも無粋ですよね」
「でしょう? 雄一郎さんは悪くないんだけど、時期が悪いわね~」
お母さんもボクの意見に同意のようだ。
可愛らしいミレたちを眺めつつ、ボクも自分の膳に手を付け始める。
すると、いつの間にかミレとミカ、ミナがボクのすぐ真横にやってきた。
そのままボクの手を抑え、代わる代わるボクの口に膳の中身を運んでくる。
いわゆる『あ~ん』スタイルだ。
「あらあらうふふ」
お母さんは実に楽しそうだけど、ボクは地味に大変だった。
「さ、さすがに今のボクの口にはその大きさは入らないよ……」
少し大きめの煮物をそのまま口に突っ込まれたりもしたが、徐々に小さくしていってくれたのでなんとか食べることができた。
汚れた口廻りはすぐに拭われ、飲み物が欲しいというとそっと差し出してくれる。
実に至れり尽くせりだ。
「うちの娘がいつの間にか美少女ハーレムを作っているわ」
お母さん、実に楽しそう。
「ハーレム要素がどこにあるんですか……」
せめてハーレムにするならもう少し成長した姿でお願いします。
自分と同じサイズの女の子を侍らせても意味ないですからね!?
こうして夕食は実に賑やかに過ぎていくのだった。