ゲームと小説と遊びの子狐屋じゃくまるブログ

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神様になったTS妖狐はのんびり生活したい~もふもふ妖狐になった新人神様は美少女となって便利な生活のため異世界と日本を往復する~ 第16話 遥とミレの狩り

 結局、隣接した混沌から来る存在についてわかることはあまりなかった。

 世界と世界の間には何かがあるのだろうか。

 混沌と宇宙は違うものなのだろうか。

 わからないことが多すぎるので、頭がパンクしそうになる。

 

 フェアリーノームの世界から帰ってきたボクとミレは、今後のことについて考えることにした。

 一つめはお爺様に言われたことを達成して日本に戻る。

 二つめは【亜神】について調べる。

 三つめはボクがゆっくり過ごせる場所を用意する。

 

 というわけで、王都までの道のりをそれとなく調べてみた結果、かなり遠いことが分かった。

 

 今いる場所は、【サリエント】という王国の辺境にある【アルテ】という村らしい。

 正式な領主はいないらしく、辺境開拓隊のリーダーであるアルテ村村長が暫定領主ということだ。

 領主がいないということで直轄領扱いなのだそうだが、王都からは遠いため税の支払いは最寄りの街の徴税事務所に持っていくことになっているそうだ。

 村民はむらのサポートを受けられるが納税が発生する。

 村民以外はサポートは受けられないし都度税を合わせた支払いを求められる。

 ボクも村民ではないので、村での活動には納税が付き纏う。

 

「よくよく考えてみると、ボクって住所不定無職なのか」

 なんとなく文字にしてみたら恐ろしいことに気付いてしまった。

 とはいえ、村民になる気はないし……。

 

「と、とりあえず、狩りでもしてこよう。ミレ、いこ」

 ボクはミレの手を引きながらログハウスを出発した。

 

 ぞろぞろと引き連れていくわけにもいかないので、ほかのフェアリーノームたちには必要に応じて来てもらうことにして、ログハウス内での作業を優先してもらうことにした。

 ログハウスが出来てからというもの、かなりの数のフェアリーノームが拡張地下空間に行っているようなので何かをやっているんだと思う。

 まぁ、あとで聞いてみよう。

 

 森の中はところどころ明るいが全体的には薄暗く、足元に注意して進まなければいけない。

 幸いなことにスライム類は見かけても蛇類は見かけていないので毒を受けたりすることはなさそうだ。

 はっきり言って知らない上に敵性生物が出る森なんて怖くてふつうは絶対いけない。

 

「まだ慣れてないせいか、気配とか追いにくいなぁ……」

 ミレが警戒する傍らで周囲の様子を観察する。

 ミレがいてくれて本当に助かる。

 一人だと多分警戒しすぎて疲れて何もできないと思うから。

 

「やっぱり分かりにくいなぁ。もうちょっと便利にする必要があるかも。敵性生物を察知する何か……」

 レーダーかベルのようなものが必要かも。

 ドローンっていう手もあるか。

 

 ボクが考え事をしていると、突然背筋に寒気が走った。

 何が起きたんだろう? そう思って後方を見てみると、尖った耳っぽいのが見えたような気がした。

 するとミレが、ボクの裾をクイクイと引っ張る。

 どうやら敵のようだ。

 

「もしかして、ゴブリン?」

 ボクの問いかけにミレは頷いた。

 なるほど、それでか。

 

「よ、よし。狙っていくね。外したらよろしく」

 ボクはミレに後を託すと、グングニルもどきの石槍を取り出して構えた。

 

 じっくり狙い、相手に焦点を合わせる。

 すると不思議なことが起きた。

 見えないはずのゴブリンの姿が、透けるようにして浮かび上がって見え始めたのだ。

 そして構える。

 すると『命中する』という明確なビジョンが見えるのだ。

 

(いけぇぇぇぇ!!)

 心の中でそう叫び、ふっと息を吐く。

 石槍はまっすぐ飛んでいくと、ゴブリンの頭に命中。

 そして緑色の頭を粉砕するとボクの手元に戻ってきた。

 

 パチパチパチパチ

 

 ミレがボクに拍手を送ってくれた。

 石槍のおかげではあるけど、ちょっと嬉しい。

 硬いイノシシの頭にも突き刺さる石槍だけあって、ゴブリン程度の頭蓋なら粉砕できる威力があるようだ。

 でも素材が石なので、いずれは壊れてしまうだろう。

 

「ミレ、アイテムの回収に行こう。それが終わったら続きをするね」

 ミレが同意するのを待ってから動き始めた。

 

 頭部が粉砕されたゴブリンの肉片をミレが魔法で焼却していく。

 これも覚えたいので、あとで教えてもらおうかな。

 今回のゴブリンはさびた鉄の斧とナイフを持っていたのでちょっと得した気分になった。

 木の武器だったり鉄の武器だったり、ゴブリンにも格差があるのだろうか?

 

「お?」

 ゴブリンは何か小袋を持っていた。

 中身はでこぼこになった金貨三枚と銀貨五枚、銅貨八枚、そして何かの種だった。

 ゴブリンがお金を持っているのか。

 身元に繋がるものはないし、あとでイーサさんあたりにでも聞いてみようかな。

 

 一体目のゴブリンを倒したので次の敵を探す。

 イノシシでもいいしウサギでもいい。

 でもさっきからウサギの姿は見ていない。

 

「ミレ、動物の姿少ないね。何かあるのかな」

 動物はボクよりも周囲の敵意や異変に敏感だ。

 そんな彼らがいないということは、何かがあるということだ。

 

 ミレはボクの袖口を引くと、ボクたちから見て森の奥の方を指す。

 何かがあるということか。

 

 ミレの指示に従い、ゆっくりとその場所へと近づく。

 周囲を経過しながら歩くこと二十分。

 森の少し開けた場所には焚火とそれを囲う四体のゴブリンがいた。

 どうやら小規模な野営地のようだ。

 いくつかの木箱があるのでどこからか持ってきたのだろう。

 

「ミレ、行くよ。ボクが援護する」

 ボクの言葉を聞くとミレはこくんと頷いた。

 戦闘開始だ。

 

 ボクが石槍を構えると同時に、ミレが茂みから飛び出し、一足飛びでゴブリンの一体の頭をかち割った。

 襲撃に慌てたのか、ゴブリンの一部は武器を取り落として慌てて拾っている。

 その隙を見逃さずボクは石槍を投げた。

 

 吸い込まれるように石槍がゴブリンの頭に当たると再びはじけ飛ぶ。

 石槍はボクの手元に戻ってきた。

 

 ゴブリンは突然の飛来物に驚き、周囲をさっと見回すも、その隙をついてミレが一本目の斧を投げつけてゴブリンの体に突き刺す。

 斧の投擲が直撃したゴブリンは崩れ落ち、それを見た最後のゴブリンはだっとその場を逃げ出した。

 ミレが斧を振り上げ飛び跳ねて躍りかかる。

 そのミレの姿を見たゴブリンは、怯えるようにして頭を抱えてしゃがみこんだ。

 ミレは少し先に着地し斧を地面に突き刺してしまったので、ボクが石槍を投げ、しゃがみ込むゴブリンに命中させた。

 

 こうしてゴブリンの小規模野営地は壊滅した。

 

「ふぅ。こ、怖かったぁ……」

 若干吐きそうになるものの何とかこらえると、ミレがボクを見てサムズアップしてくれたのが見えた。

 

「うん、お疲れ様。ミレ」

 イーサさんはいないけど、ボクたちの初めての連携は成功した。

 ちょっと投げるタイミングとか気になったけど、もっとうまく立ち回れるよう頑張ろうと思う。