ゲームと小説と遊びの子狐屋じゃくまるブログ

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目が覚めたら洞窟の中でした。仕方がないので生活環境を整えつつ帰還を目指します。 第11話 建築作業とこれからのこと

 今日も今日とてピッピ―とホイッスルの音が聞こえる。

 フェアリーノームたちが建築作業を行っているのだ。

 

 ガンガン、ズドンズドン、ザックザック色んな音が鳴り響いている。

 そんな中、狐たちはじゃれあったり私の尻尾に潜り込んだり、女神テューズに襲い掛かって遊んだりしていた。

 

「主様~、建築作業は順調です~。フェアリーノームちゃんたちは本当にすごいですね~」

 近くにやってきた雛の頭には安全ヘルメットが乗っており、手には数枚の紙束が握られていた。

 完全に建築現場の監督スタイルだ。

 

 コンクリートを打って建築はしないものの、洞窟奥から石を切り出したり木を伐採しては柱を立てたりといった作業を繰り返していく。

 ちなみに、洞窟奥は鉱脈があるようで、そこから地下に掘っていきたいとフェアリーノームから要望があった。

 それもあって、洞窟には鉱山のような支柱が作られている。

 

「この辺りは進入限定地域として設定します。無関係な存在は外部から入れなくなります」

 傍らにいた女神テューズがそう宣言した。

「先に決めた範囲まではそれで構わないよ。いずれ下のものを切り離さなきゃいけないからね」

 進入限定地域はいずれ島本体から切り離されることになるので、主要なものだけここに立てておく必要がある。

 

「ご主人様。この世界で少しお手伝いしていただきたいことがあるのですがよろしいですか?」

 作業の様子を見ていた私に雛菊が話しかけてきた。

「うん、構わないよ? 何か問題がありそうだね」

 雛菊は管理者ではあるが、今後は私にくっついて行動することになるのでこの世界に常駐することはなくなるのだ。

 

「はい。まずはこの島にある汚染の除去と古代兵器の回収をしてほしいのです。かなり昔から立ち入り禁止にしているので持ち出し自体はないのですが、まだ自動兵器が残存している可能性があり危険なんです」

 現在の人類が第五紀であることを考えるとある程度管理しないといけないのは確かだ。

 特に第三紀以降の人類が未熟なまま第二紀人類の兵器で大規模な汚染戦争を始めてしまったことを考えればなおさらか。

 

「わかった。それについては少しずつ解決しよう。まだ力は回収できていないしね」

「ありがとうございます。あと他にですが、傷ついた惑星の修復をお願いしてもいいでしょうか? 過去の人類によって惑星は大規模なダメージを負っています。魔素を追加することで回復を目指していますが、いずれ魔素を回収する必要があるので、修復と同時に循環機構を整備していただきたいのです」

 この世界は危機をまだ抜け出していない。

 魔素は使い方次第ではシアたちのような危険なものを呼び寄せることがある。

 そのため、本来であれば管理できる状態でのみ運用するほうがいいのだが、今回はそれも機能していない状況なのだという。

 まぁシアを含む『アレ』がこの世界に来てしまったせいで汚染が発生したのなら、それを取り除くのも私たちの仕事になるかな。

 

「シア。君たちがこの世界に侵入した際に発生した汚染ってなんなんだ?」

 近くで作業を見ていたシアに声をかけた。

「? 汚染がよくわからない。ただ、わたしたちが世界に入り込むと歪みが一瞬発生する。この世界にもある魔素という素子は不安定。空間に発生した揺らぎを受けて変質を起こした。固まってべちゃっとなってしまったヘドロのように。ちょうどこの森の先にある場所がそう。紫色のヘドロ。それが変質した魔素という素子」

 どうやら魔素は思っていた以上に不安定なもののようだ。

 これは消えるまで使える管理装置も用意したほうがいいのかもしれない。

「そうか。ありがとう」

「大丈夫。また聞いて」

 シアはそう言うと作業を見に戻っていった。

 彼女は変わったのだろうか。

 それとも元々そうなのだろうか。

 

「雛菊。『アレ』も1つじゃないのかもしれないね」

「はい。そうかもしれません」

 未だに名前が存在しない『アレ』。

 まぁ今回シアが使った魔法陣が『アレ』にアクセスできる唯一の方法だってのは知っていたけど、今まで対話らしい対話をしたことはないので何を考えているのかはわからない。

 

「それと、ここでしばらく過ごされると思いますので、帰還用のポータルを使用されてはいかがですか?」

「ポータルかぁ。後で用意しようか。ところでこの世界に神界みたいな世界は作ってないのかな?」

「ありますけど、発展はしてません。ご主人様に作り直していただいてもよろしいですか? テューズに任せてみたのですが、草原と湖と建物しか作れませんでしたので」

「あ、うん。わかった。それと雛菊は今後どうする予定でいる?」

「はい、わたくしはご主人様についていこうと思います。姉様たちのように。回復とかが得意ですのでよろしくお願いします」

 どうやら今回から雛菊が従者としてついてくるようだ。

 回復担当はいなかったので今後は四名体制になるのかな?

 それはそうとテューズ、私を睨まないでほしい。

 

「お姉様がいなくなる……。捨てられた……」

 テューズ、まさかの病み状態。

 

「繋がりは残しているので辿れば貴女も来られるでしょう? 世界の行く末は貴女にかかっているのですから奮起しなさい。頑張った分ご褒美をあげますから」

「ご褒美! 頑張ります!!」

 雛菊は優しいだけじゃなくて部下の扱いも上手い。

 病みに突入し始めたテューズもあっという間にやる気を出してしまった。

 雛菊すごい。

 

「さすがだね。雛菊は。あとは何かしてほしいことはある?」

 ほかに何かあるか確認すると、雛菊は「う~ん」とうなって考え込んでしまった。

 それからしばらくすると顔を上げて要望を伝える。

異世界からの召喚が過去にあったのですが、ルール整備前だったので対応できていませんでした。現在は禁忌としているので違反者及びその国に対して強力な罰則が必要になります。なので、執行者を呼びたいのですがいいでしょうか?」

「執行者? う~ん。いいけど、滅ぼすのかな?」

 私は雛菊の言葉を聞いて少しだけ驚いてしまった。

 まさか、執行者を呼び寄せたいとはね。

 

「見せしめというわけではありませんが、記録には必要かと」

「わかった。それはあとで手配しよう」

「お願いいたします」

 苦労をかけた雛菊のお願いなので素直に聞くことにしよう。

 

「しかし、誰を呼び寄せるかなぁ……」

 執行者は氷と死の女主人エレシュキガル、大地母神ティアマト、災禍の炎スルト、闇と混沌の坩堝カオス、時と空間の覇者クロノス、癒しの光アイリス、光輝の軍団長セフィシスの七人存在している。

 神話から名付けられた者が五人、それ以外から名付けられた者が二人だ。

 それぞれ実力は得意なことが違うので甲乙つけがたい。

 

「呼べても三人までだと思います。全員呼ぶとさすがに惑星の終末になってしまいますので……」

「まぁまだ先の話だから余裕ができたらかな」

 今はまだ力が足りないので大きな存在を呼ぶことはできない。

 まぁ向こうから来る可能性はあるけど……。

 

「ピッピー」

 しばらく雛菊と話し込んでいたが、どうやらいくつかの建物が出来上がったようだ。

 彼女たちの建築能力の高さには本当に驚かされる。

 

「ピッピッピッ」

 ホイッスルが短く鳴り響くと、大きな窯が運ばれていった。

 どうやらピザ窯のようだ。

 なんでピザ?

 材料ないんですけど。

 

「マスター、フェアリーノームちゃんたちがピザを食べたいそうです」

「えー? 材料ないんだけど?」

「主様~、あたしもってま~す」

「ピピッピー」

 用意の良い雛は倉庫に材料を確保していたようだ。

 それを聞いたフェアリーノームが喜びのホイッスルを鳴らしていた。

 しょうがない、これから作りますか。

 

 こうして私はピザ生地作りから始めるのだった。

 窯の用意はしておいてね。