ゲームと小説と遊びの子狐屋じゃくまるブログ

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目が覚めたら洞窟の中でした。仕方がないので生活環境を整えつつ帰還を目指します。 第5話 突然襲われたので応戦します

 えー、なんだかよくわかりませんが、突然目の前の人物が襲ってきました。

 ちょっと怖いです。

 今私は、さくらと雛に守られ後方にいます。

 これでいいのか? 私よ。

 

「消え去れええええ!!」

 発狂したかのように叫びながら私たちに攻撃を仕掛けてくる目の前の女性。

 雛が女性の攻撃を防ぎながらさくらは相手の分析を進めていく。

 圧倒的な熱と衝撃が雛の前に展開されるシールドに叩きつけられていく。

 

「あの女性なんなんだ? 私はあんな女性は知らないぞ? でもあの女性の近くにのポッドには見知った波長があるから、おそらく雛菊はあそこだろう」

 苛烈に攻撃を繰り出す女性の後ろには蓋の閉じたメディカルポッドがあった。

 使用中なのはわかるが、だとすると雛菊は大きなダメージを負ってしまったということなのだろうか?

 私がサボっていたばかりに、何か無理をさせてしまったのなら申し訳ない。

 

「雛ちゃん、まだ大丈夫そうですか?」

 シールドを展開し防御する妹分にさくらがそう声をかける。

 

「余裕です~。さくら姉様の攻撃とか鈴ちゃんの攻撃に比べれば大したことはありません」

 雛は微笑みを浮かべながらそう答えた。

 

 私の目から見ても雛にはまだまだ余裕はあると思うが、目の前の女性はどう考えても普通じゃない威力の攻撃を繰り出している。

 

「おのれええええ、おのれええええ!! 蒸発して燃え尽きてしまえ!!」

 攻撃を凌がれているのが気に入らないのか、女性はそう言うと突然両手を上に掲げ何かを生み出そうとする。

 

 しかしあの女性、何か目がおかしい。

 いや、雰囲気自体おかしいのか?

 知能も低くて、まるでゾンビやバンシーか何かのような雰囲気を感じる。

 

 見たところ炎か何かの塊のようで、赤色から青色、そして白色へと変化していく。

 どんどん温度が上がっているようだ。

 これはやばいか?

 

「雛、ちょっときついのがくる。耐えられるか?」

「あの程度なら大丈夫です~。それよりもこの部屋のほうが心配ですよ~」

 私の心配にも雛は平気そうに答える。

 やっぱり防御担当なだけあってその頑健さは宇宙一だと思う。

 頼もしい従者だ。

 

「この部屋なら大丈夫。恒星のコロナにも耐えられるよう設計されている合金だからね」

 そうでなければ次元航行などできるはずもないのだ。

 あと問題なのは、あの目の前にいる女性とメディカルポッドの中の雛菊だけだ。

 

「主様、来ます」

 雛がそう言った瞬間、とてつもない衝撃と熱が私たちを襲った。

 相手の白い炎の光球が直撃したようだ。

 だがこっちは雛のおかげで無事である。

 

「マスター、あの女性の正体がわかりました。発狂状態なので正気ではないようですが、あの女性は【女神テューズ】です。この世界の主神の地位にいる女神です」

「え? それ本当? そんな神がまたなんで……」

 相手の正体を聞いて私は驚いた。

 普通なら神界などの神殿で管理を行っているはずの主神が、なぜかこのような場所にいるのだから。

 

「本当です。しかし主神ですか。これは困りました。討滅するわけにはいきませんのでどうにか抑え込みませんと」

 さくらの言う通りだった。

 この世界の主神ということは管理をする存在ということだ。

 それはつまり、管理者を任せた雛菊の生み出した部下であるということでもある。

 はいそうですかと消してしまうことなどできるはずもなかった。

 

「わかった。まずは相手を弱体化させて抑え込む。雛は防御しつつ、隙を見て攻撃。さくらは相手が怯んでいるうちに攻撃して弱らせてくれ。私は状況を見て束縛する」

「わかりました~」

「わかりました!」

「消え去れええええ!!」

「おっと」

 解析を終えて会話をしている最中にも相手の攻撃は止まることはなかった。

 さて、どうやって束縛するか。

 私自身が残っている力を使ってもいいのだけど、そうすると雛菊を救助することはできない……。

 

「ん~……」

「見えた! シールドバッシュ」

「アガァァァァ」

「隙だらけです! 主神がそれでは雛菊ちゃんが泣きますよ? 食らいなさい!」

「ギャァァァァ」

 圧倒的攻撃の後には神といえども隙があるもの。

 その隙を的確について雛とさくらが連係プレーを決める。

 

「すごいな。さすが二人だ」

 私がそう言うと二人は一瞬こちらを見て照れたように微笑んだ。

 

「鈴ちゃんがいればもっと楽なんですけどね。ところでマスター? この部屋には錯乱者拘束用の装置があるようですが」

「あ、本当? それがあればどうにかなる」

 さくらの助言のおかげで突破口が見つかった。

 

「グゥゥゥゥ、グゥゥゥゥ。オノレエエエエ」

 さくらの攻撃で相手は怯んでいるようだ。

 

「女神テューズよ、しばらく動きを止めろ!」

「グゥ!?」

 私の言葉が響くと同時に相手の動きがぴたりと止まる。

 今の私の力では短時間しか拘束できないので、この部屋にある装置を駆使しなければいけない。

 

 幸い錯乱者拘束用装置には力吸収装置が付随しているので、それを利用することにした。

「装置起動。まずは相手の力を吸収、供給対象は私だ」

 部屋の隅にある装置のディスプレイに手をかざすと、うまく認証してくれたようだ。

 部屋の中央から半透明の球体が出現し、動きを止めている女神テューズの体から白い靄のようなものを吸収している。

 そしてその靄は私にも繋がり、私の体へと流れ込んでくる。

 

「グゥゥゥゥ、力ガ……、抜ケテイク……! ガァァァァ!!」

 ある程度吸収した時点で、女神テューズが叫び私の拘束を解いた。

 

「グゥゥゥゥ、グゥゥゥゥ。ユルセナィィィィ」

 女神テューズはそう口にすると、再び攻撃を始めた。

 

「させません~!」

 それを再び雛が防ぎ、隙を見て怯ませる。

 

「いい加減黙りなさい!」

 さくらが怯んだ隙に攻撃をし、再び弱らせる。

 その隙に私が拘束し、力を吸収して弱らせる。

 今はこのパターンを繰り返すしかない。

 

「ヨクモヨクヨクモヨクモヨクモ」

 数度繰り返したところで、相手の動きに変化が生じた。

 何やら黒いオーラが渦巻き、女神テューズの体から何かを引きずり出している。

 これはまずい……。

 

「マスター、これ以上この繰り返しは女神テューズの体に負担がかかります。そろそろ決めないといけません」

「あの神様、自分の存在を力に置き換え始めてます。このままいくと、消滅します」

「まずいな。完全に拘束するにはもう一手ほしい……。今のままだと装置で拘束するだけじゃすぐに抜け出してしまうな……」

 拘束力という点では私の力のほうが上だが、それでは雛菊の救助に力を回せない。

 かといって装置だけでは短時間しか拘束できないと思う。

 装置と何かを組み合わせれば長時間拘束できるのだが……。

 

 いっそ私の拘束と装置を組み合わせるか? しかしそれでは雛菊の救助に使う力が足りなくなってしまう。

 それに吸収装置を使うとその場からしばらく動けないという問題もある。

 なぜなら、吸収装置は吸収対象と供給対象の距離がある程度決まっているからだ。

 雛菊のポッドまでは届かない。

 

「そうだ、マスター! 鈴ちゃんです!」

 悩む私にさくらがそう提案する。

 そうか、鈴を呼び出せばある程度力の供給も受けられるか!

 

 鈴は魔法や薬などの分野に特化した従者だ。

 なので、力を私にやほかの従者に分け与える力も持ち合わせている。

 そうと決まれば!

 

「おいで、鈴(りん)」

 念じて指をパチンと鳴らす。

 すると黒い丸い空間が開き、そこから黒いローブをかぶり目を半分だけ開いた眠そうな表情の妖狐の少女が出てくる。

 

「……」

 鈴は一度私をじっと見、そして周囲を見、黒い力を広げつつある女神テューズを見て印を切った。

 

「拘束・束縛」

「グガッ!?」

 鈴がそう言うと、ぴたりと相手の動きが止まる。

 今度は微動だにしない。

 

「供給開始」

 そして今度は、鈴が私のほうを見て近寄り抱き着いた。

 鈴の温かい体から力が流れ込んでくる。

 

「もう大丈夫」

 そう言うと、鈴は私から離れる。

 

「命令、して?」

 鈴は眠そうな表情のまま、私を見てそう言った。

 

「鈴、拘束装置と術を駆使して相手を拘束していてくれ。私は雛菊を救助する」

「わかった」

 私の指示を聞くと鈴はこくりとうなずき、拘束装置のほうへと向かっていった。

 

「やっぱり鈴ちゃんはすごいですね」

「鈴ちゃん強い~」

 さくらと雛はどこか嬉しそうにそう言った。

 

 私は相手が動けない隙にメディカルポッドに駆け寄り、装置に手をかざす。

 一瞬後、認証が完了したようで次の指示を求めてくる。

 

「ポッドオープン」

 私がそう伝えると、雛菊の入ったメディカルポッドの蓋が静かに持ち上がっていく。

 やがて、白い顔をした小さな少女が目に入った。

 

「雛菊……」

 私は妖狐の姿をした雛菊の肌を手で撫で、そっと抱きしめる。

 

「マスター、時間がありません。女神テューズが消滅する前に雛菊ちゃんを起こしてください」

「はやくはやく~」

 さくらと雛が私にそう催促する。

 しかし、接触からの供給ではすぐには力の回復はできない。

 どうしてももう少し時間がかかる……。

 

「詠くん、粘膜接触のほうが早い」

 抱きしめながら雛菊に力を供給していると、不意に鈴がそんなことを言い出した。

 粘膜接触

 

「早い話、キス」

「ごふっ」

 遠慮のない鈴の言い方に、私は思わず噴き出した。

 本気か!?

 

「そ、そうですね。早くするならそれしかありません……」

「主様、おもいっきりやりましょう~」

 雛もさくらも後押ししてくる。

 くっ、仕方ないか……。

 

「雛菊、ごめん」

 私はそう言うと、小さな雛菊の唇にキスをした。

 

 すると、ぴくんと雛菊の体が反応し、うっすらと目を開け始めた。

 

「う……。ここは……? わたくし、どうしてましたっけ……」

 ぼんやりとした表情の雛菊は、周囲を見てそう言い、私の顔を見て止まった。

 

「あ、ご主人様……!?」

 雛菊は驚いたような表情をするとそのまま私に抱き着いて頬ずりを始める。

 

「うわああああん。あいたかったですうううう!!」

 雛菊はそのまま頬ずりを続け、泣きながら私の胸に顔を埋める。

 

「おはよう、雛菊」

 私はそう声をかけると、雛菊の頭をそっと撫で続けた。

 

 こうして私たちは無事に、雛菊の救助に成功した。

 しかし問題はまだ解決していない。

 

「雛菊、ごめん。雛菊の眷属の暴走を止めてほしいんだ。君にしかできないことだ」

 私の言葉を聞いて雛菊は顔を上げ、未だ拘束され続けている女神テューズのほうを見る。

 そして、こくんとうなずくとこう言った。

 

「テューズ、もう止めなさい。わたくしは無事です。終わったのです」

 その言葉を聞いて、恨みがましい目で私たちのことを見ていた女神テューズはつきものが落ちたように落ち着いた表情になる。

 そして……。

 

「あっ、あっ。よかったです……。お姉様……。本当に良かった……」

 拘束されたままではあるが、女神テューズは目に涙を浮かべ最後にははらはらと泣き始めてしまった。

 

 こうして雛菊を巡るトラブルは一旦の解決を見た。

 だが問題はこのあとの事後処理と、神族の弱体化の解決だ。

 

 どうやら諸々の問題が積み重なり、雛菊は倒れ女神テューズは暴走し弱体化してしまったらしい。

 今後はその解決と事態の収拾を図ることになる。

 

 あぁ、早くゆっくりしたい……。

 根が怠惰な私は、もうすでに休みたくて仕方なかった。

 

 さっさと問題を解決して、帰るまでのんびりするぞ!